「僕はカメラ」

夢の中で
僕はテレビカメラになる
このカメラは 飛ぶことができる

カメラの僕は
部屋を出て
飛んで河をわたり
ビルの間を抜けて
低空飛行

公園の上でしばしたたずみ
また駅のほうへゆらゆらと
移動する



そしてついに
歩道を歩いている
君を発見する

日曜日の午後
晴れた空

君は友だちと一緒に
楽しそうに歩いている
買い物の帰りか
君の笑い声が聞こえる

カメラの僕が君を捉える
君をクローズアップしたその時
このカメラには発声装置がないと
気づく

君は僕に気づかない
この奇妙なカメラには誰も気づかない
君の名を呼びたい
声は出ない

突然君の笑顔がゆがむ
カメラのレンズに流れるものがある
それが自分の涙だと知り
驚く

涙を流せるくらいなら
なぜ、声が出ないのだと
いぶかしがるところで



眼が覚める




CopyrightC 1997 おじちゃんパパ. All Rights Reserved.